トビハゼ(PDF版; 202kb)

写真提供:佐賀県有明水産振興センター

■トビハゼ
 標準和名 学名
 主な地方名
 分類上の位置
硬骨魚綱 スズキ目 ハゼ科1)
 外部形態の特徴
体色は淡い灰褐色で、後頭部から尾柄にかけて5〜7本の不規則な暗色横帯がある。頭部は大きくて丸みを帯び、口は下向きに開く。眼は頭頂に位置し、眼球は真下にあるくぼみへと引き込むことができる。鰓蓋は袋状を呈し、時折、口腔と鰓腔に水または空気を含み、膨らませる。腹鰭は左右が鰭膜で癒合し、吸盤状になる。本種の皮膚には陸上生活に適応した特殊な構造がみられ、皮膚呼吸の効率向上や空気中での断熱・保湿効果があると考えられている。
 貴重種、特産種、固有種、レッドデータブック記載種など
絶滅危惧TB類(福岡県)2)
減少種(水産庁)1)
危急種(東京湾個体群:水産庁)3)
希少種(沖縄島個体群:水産庁)3)
■生理・生態
 分布
日本:
愛知県から九州のほか、東京湾(江戸川河口周辺)及び沖縄本島(中城湾、羽地内海)
世界:
香港から韓国及び台湾
 生息場所
泥質の干潟が発達する河口域や内湾に生息する。東京湾の江戸川では消波効果のあるヨシ原と護岸の間で、潮位110〜160cm、底質は粒径74μm以下のシルトを約50%含み、含水率が40%ほどの泥が20cm以上の厚さで堆積している場所に多く生息する。汽水性の魚類で、塩分に対しては広い適応性を備え、潮汐によって大きく変動する塩分濃度にもよく耐える。水温との関係については知られていない。
 生活史・寿命
卵は沈性付着卵で、受精後は長径約1.0mm、短径約0.6mmの楕円体をなす。水温18〜21℃の飼育条件下では、受精後1週間で孵化する。孵化仔魚は全長2.1〜2.9mm。孵化後44〜45日で全長12.0〜14.0mm、口は下向きとなり、成魚と同様な皮膚構造になるなど、陸上生活に適した形態への移行がみられる。孵化後52日で成魚とほぼ同型になり、水陸両生生活を始める。有明海や東京湾では8月〜9月に、全長約15mm前後の稚魚が干潟上に現れる。
 移動・回遊
 産卵期・産卵場(環境条件)
東京湾及び有明海における産卵期は、5月下旬から8月中旬で、6月中旬から7月下旬が盛期とされる。
 習性
本種の行動は春季から秋季の活動期と、冬季の休止期に大きく分けられる。活動期には水陸両生生活を行ない、干潮時には干潟の泥表面を匍匐したり、水面上をジャンプして移動する。潮が満ちてくると、岸辺やヨシの茎、杭などの沈水しない場所へ移動し、次の干潮を待つ。休止期には干潟の泥に越冬用の巣穴を掘り、次の活動期まではその中で過ごす。産卵期に雄は干潟上に縄張りを形成し、その中心で泥を掘り、産卵巣を作る。産卵巣は内径1.5〜2.0cmで、深さ15〜30cmの垂直または斜めに掘り下げた坑道を持つ。その先端部は上方に向かって10cmほど曲げた、内径3cmほどの産卵室につながる。雄は婚姻色を発し、求愛行動(跳躍、ダンス、体制誇示)を行ない、雌を巣穴に誘導する。
 成長(年令形質、成熟年齢、寿命)
生後1年で体長5cmとなって成熟する。寿命は多くの個体が2年とされてきたが、東京湾では、1,2,3年の3年級群がみとめられ、主産卵群は2年級群と推定されている。成魚の全長は15cmを超える。
 食性
動物食で、多毛類、ヨコエビ類、小型カニ類、稚魚などを、干潟上を活発に動いて捕食する。
 
■漁業
 漁期(禁漁期)
 漁獲制限サイズ
 漁具・漁法(遊漁)
漁獲対象とされない。
 
■漁場
 
■漁獲量
 
■利用加工
 食品としての利用
小型であり、骨格系が発達し硬いことなどから食用とされない。
 成分分析値
(五訂 日本食品標準成分表(2002)に記載なし)
 調理方法
■その他
 特記事項
生活様式が特異な水陸両生生活であり、泥質干潟の生態系との関わりも強く、干潟の保全・再生の指標生物としても注目されている。
 文献
1)萩原清司.トビハゼ.日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(V) 水産庁 1996;136-141.
2)福岡県.福岡県の希少野生生物.福岡県レッドデータブック2001;289.
3)萩原清司.トビハゼ.日本の希少な野生水生生物に関するデータブック 水産庁 1998;98-99.
4)萩原清司,棚瀬信夫,北島洋二,越川義功,町井みのり.干潟の生態に関する研究(その3) トビハゼの種苗生産技術の開発.鹿島技術研究所年報 1993;(41):343-348.
5)小林知吉,道津喜衛,田北徹.有明海産トビハゼの巣について.長崎大水産研報 1971;(32):27-40.
6)小林知吉,道津喜衛,三浦信男.トビハゼの卵発生および稚仔の飼育.長崎大水産研報 1972;(33):49-62.
7)的場実,道津喜衛.有明海産トビハゼの産卵前行動.長崎大水産研報 1977;(43):23-33.
8)内田恵太郎.ムツゴロウ及びトビハゼの生活史.日本学術協会報告 1932;7(2):109ー117.
9)科学技術庁資源調査会編集.五訂日本食品標準成分表.科学技術庁資源調査会報告 2000;第124号.
■文献情報

専門分野:
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水産業との関わり:
  を含む

海域: