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水産用水基準(2005年版)
 水産用水基準(2005年版)について

平成18年3月
社団法人 日本水産資源保護協会
T.趣 旨
U.水域の特性と水産用水基準の適用
V.利用にあたっての注意
W.基準値
 1.有機物(COD、BOD)
 2.全窒素、全リン
 3.溶存酸素(DO)
 4.水素イオン濃度(pH)
 5.懸濁物質(SS)
 6.着色
 7.水温
 8.大腸菌群数
 9.油分
 10.有害物質
 11.底質
  表1 人の健康の保護に関する環境基準に定められている有害物質の基準値とその分析方法
  表2 生活環境の保全に関する環境基準に定められている有害物質の基準値とその分析方法
  表3 要監視項目として定められている有害物質の基準値とその分析方法
  表4 ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準とその分析方法
  表5 基準値、指針値が定められていない有害物質の基準値


 
T.趣 旨
 自然水域には、それぞれの環境の特性に応じて、多くの有用水産動植物が生息しており、それらが漁獲の対象となっている一方、そこでは増養殖も広く営まれている。これらの水域の水は、水産業にとっては生産の基盤となる重要な環境要素であり、その具備すべき条件は、水産動植物の正常な生息および繁殖を維持し、その水域において漁業を支障なく行うことができ、かつ、その漁獲物の経済価値が低下しないことが必要である。そのような条件を備えたものとしては、まず、正常な自然水域の水質があげられる。 
河川、湖沼あるいは海洋の成立過程や歴史的に果たしてきた役割などを考えると、自然水域に汚染負荷をまったく許さないということで、水域の条件を検討するのは実際的ではない。 
 しかし、もし、水域に存在する物質が自然条件の限度を越え、あるいは自然界に存在しない物質が蓄積されていくような場合には、水域の正常な生物生産が阻害され、その結果として水産業に被害が発生する心配がある。したがって、自然水域の水質をそこなわねためには、むしろ、自然条件を十分検討して、水生生物保護のための環境の水質基準をつくることが必要であり、これを水産用水基準と名づける。
 この基準は、現段階における研究成果から得られた諸情報を基礎として策定したもので、将来得られる各種の水域調査や生物試験の結果を定期的にi補足し、改定を行っていく必要がある。
 
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U.水域の特性と水産用水基準の適用
 わが国は北から南にかけて細長く伸びた陸地であり、河川、湖沼に恵まれ、また、陸地を取り囲むように南から黒潮が北上し、北からは親潮が南下して陸岸を洗っている。これらの水域は水温分布の幅が広く、そこに生息する生物は多様性に富んでいる。
 水産用水基準の適用対象となる水域には、有害物質を含む水の排水口直下やその近傍の水域を含むことは適当ではない。また、自然の水域にも異常なところがあり、たとえば、酸性の強い湖沼などにはその水域なりに順化した魚類が生息している事実も見られる。水産用水基準はきわめて一般的に考えられる条件を想定している。したがって、その適用にあたっては、それぞれの水域の特性をよく考慮することが必要である。
 河川を重要魚種の分布により区分すれば、北方型(サケ、マスが代表的魚種)および南方型(アユ、ウナギが代表魚種)に分けられる。自然的な環境条件によるそのような区分とは別に、わが国の主要な河川がきわめて高度に利用されており、すなわち、水を利用できるだけ利用した上で、さらに残されている水に排水を流入させたりしているので、汚染を考慮に入れた分類もまた必要である。そのような意味から、河川の区分を強腐水性、αおよびβ中腐水性水域、貧腐水性および毒腐水性の水域区分によって考えることにする。水産用水基準が適用されるのはβ中腐水性と貧腐水性水域である。 
 湖沼は、自然作用および人為行為により、調和型と非調和型の湖沼に分類される。調和型の湖沼はさらに、貧栄養湖、中栄養湖、富栄養湖に分類される。非調和型の湖沼には酸栄養湖、腐植栄養湖等がある。酸栄養湖は各地にあり、その酸性状態のまま、ある程度の生産性を維持しており、これは基準値では律することができない条件である。また汽水湖で、底層には無酸素水の層があるのにその表層では、かなりの生産性が保持されている湖沼があり、このようなところも、基準値を適用しにくい水域である。このような水域は除き、水産用水基準では、湖沼については、調和型の富栄養湖と中栄養湖の水域区分を、その適用範囲と考えることにする。 
 海洋は、親潮系水域と、黒潮系水域とに区分して考える必要があろう。また、汚濁の環境条件に関連の深い要因の中に、水域の停滞性の問題があって、内湾海域と外海域に区分して検討する必要があろう。水質基準で最も問題になる水域は、黒潮系の内湾内海域であって、富栄養化に関連して設定した諸条件は、これらを対象にして考慮したものである。栄養塩等については、親潮系水域、沖合、深海にはこの基準を適用できない。養殖生物の中で、とくにノリには栄養塩に富んだ水が適しており、そのためノリについては、CODや栄養塩類について別の条件を設けている。
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V.利用にあたっての注意
 基準値は、この限界まで汚染してもよいと認める条件をいうのではない。自然環境保全のためには、汚染物質は少ないほどよく、人為的汚染負荷は加えられないのがよい。排水処理についていえば、汚染物質を基準値から逆算して求められた放流水基準まで浄化すればよいということではなく、汚濁負荷を少しでも減少させるために作業工程上の努力と、技術的限界まで処理する努力とが必要である。
 この基準値は、論文の試験値、各種の基準値等を基に設定した。したがって、利用に際しては、必要に応じて対象水域に生息する水生生物、地形、水理等の条件を調査検討するとともに、個々の参考資料を活用して、当該水域の条件に適合した基準を設定する必要がある。
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W.基準値
1.有機物(COD、BOD)
1) 淡水域
(1) 河川
@自然繁殖の条件として、20℃5日間のBODは3mg/L以下であること。
 ただし、サケ・マス・アユを対象とする場合は2mg/L以下であること。
A成育の条件としては、20℃5日間のBODは5mg/L以下であること。
 ただし、サケ・マス・アユを対象とする場合は3mg/L以下であること。
(2) 湖沼
@自然繁殖の条件として、CODMn(酸性法)は4mg/L以下であること。
 ただし、サケ・マス・アユを対象とする場合は2mg/L以下であること。
A成育の条件として、CODMnは5mg/L以下であること。
 ただし、サケ・マス・アユを対象とする場合は3mg/L以下であること。
2) 海域
@一般の海域では、CODOH(アルカリ性法)は1mg/L以下であること。
Aノリ養殖場や閉鎖性内湾の沿岸域ではCODOHは2mg/L以下であること。
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2.全窒素、全リン
1) 湖沼
コイ、フナを対象とする場合 全窒素 1.0 mg/L以下
全リン 0.1 mg/L以下
ワカサギを対象とする場合 全窒素 0.6 mg/L以下
全リン 0.05 mg/L以下
サケ科、アユ科を対象とする場合 全窒素 0.2 mg/L以下
全リン 0.01 mg/L以下
2) 海域
環境基準が定める水産1種 全窒素 0.3 mg/L以下
全リン 0.03 mg/L以下
            水産2種 全窒素 0.6 mg/L以下
全リン 0.05 mg/L以下
            水産3種 全窒素 1.0 mg/L以下
全リン 0.09 mg/L以下
ノリ養殖に最低限必要な栄養塩濃度 無機態窒素 0.07-0.1 mg/L
無機態リン 0.007-0.014 mg/L
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3.溶存酸素(DO)
1) 河川および湖沼では6mg/L以上。
ただし、サケ・マス・アユを対象とする場合は7mg/L以上であること。
2) 海域では6mg/L以上であること。
3) 内湾漁場の夏季底層において最低限維持しなくてはならない溶存酸素は4.3mg/L(3mL/L)であること。
 
4.水素イオン濃度(pH)
1) 河川および湖沼では6.7-7.5であること。
2) 海域では7.8-8.4であること。
3) 生息する生物に悪影響を及ぼすほどpHの急激な変化がないこと。
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5.懸濁物質(SS)
1) 淡水域
(1) 河川
@懸濁物質は25mg/L以下であること。
 ただし、人為的に加えられる懸濁物質は5mg/L以下であること。
A忌避行動などの反応を起こさせる原因とならないこと
B日光の透過を妨げ,水生植物の繁殖、生長に影響を及ぼさないこと。
(2) 湖沼
@貧栄養湖で、サケ、マス、アユなどの生産に適する湖沼においては、自然繁殖および生育に支障のない条件として、透明度は4.5m以上、懸濁物質は1.4mg/L以下であること。
A温水性魚類の生産に適する湖沼においては、自然繁殖および生育に支障のない条件として、透明度は1.0m以上、懸濁物質は3.0mg/L以下であること。
2) 海域
(1)人為的に加えられる懸濁物質は2mg/L以下であること。
(2)海藻類の繁殖に適した水深において必要な照度が保持され、その繁殖と生長に影響を及ぼさないこと。
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6.着色
1) 光合成に必要な光の透過が妨げられないこと。
2) 忌避行動の原因とならないこと。
 
7.水温
水産生物に悪影響を及ぼすほどの水温の変化がないこと。
 
8.大腸菌群数
大腸菌群数(MPN)が100mLあたり1,000以下であること。
ただし、生食用カキを飼育するためには100mLあたり70以下であること。
 
9.油分
1) 水中には油分が検出されないこと。
2) 水面に油膜が認められないこと。
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10.有害物質
害物質の基準値は、表1表2表3表4および表5に掲げる物質ごとに同表の基準値の欄に掲げるとおりとする。
 
11.底質
1) 河川および湖沼では、有機物などによる汚泥床、みずわたなどの発生をおこさないこと。
2) 海域では乾泥としてCODOH(アルカリ性法)は20mg/g乾泥以下、硫化物は0.2mg/g乾泥以下、ノルマルヘキサン抽出物質0.1%以下であること。
3) 微細な懸濁物が岩面、礫、または砂利などに付着し、種苗の着生、発生あるいはその発育を妨げないこと。
4) 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律に定められた溶出試験(昭和48年2月17日環境庁告示第14号)により得られた検液中の有害物質のうち水産用水基準で基準値が定められている物質については、水産用水基準の基準値の10倍を下回ること。ただし、カドミウム、PCBについては溶出試験で得られた検液中の濃度がそれぞれの化合物の検出下限値を下回ること。
5) ダイオキシン類の濃度は150pgTEQ/gを下回ること。
備考
1) 蓄積の可能性のある成分については、人体に対する安全性を考慮した水産動植物の許容含有量の決定をまって基準値を定める。
2) 放射性物質については、関連法規に定められた基準に従う。
3) 分析方法:人の健康の保護に関する環境基準、生活環境の保全に関する環境基準及び要監視項目にふくまれる物質は公定法により分析することが望ましい。その他の基準値については公定法または一般的に用いられている方法(海洋観測指針第1部(1999)、水質汚濁調査指針(1980)、沿岸環境調査マニュアル(底質・微生物編)(1990)、環境測定分析法注解(1985))等を採用して差し支えない。
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表1 人の健康の保護に関する環境基準に定められている有害物質の基準値とその分析方法
項 目 基準値 mg/L 分析方法
淡水域 海域
カドミウム 検出されないこと 検出されないこと K0102*の55
全シアン 0.005 0.001 JIS K0102 の38.1.2と38.2又は38.1.2と38.3
0.003 0.003 JIS K0102 の54
六価クロム 0.0002 0.01 JIS K0102 の65.2
砒素 0.01 0.01 JIS K0102 の61.2又は61.3
総水銀 0.0002 0.0001 付表**1
アルキル水銀 検出されないこと 0.001 付表2
PCB 検出されないこと 検出されないこと 付表3
ジクロロメタン 0.02 0.02 JIS K0125***の5.1、5.2又は5.3.2
四塩化炭素 0.002 0.002 JIS K0125の5.1、5.2、5.3.1、5.4.1又は5.5
1,2-ジクロロエタン 0.004 0.004 JIS K0125の5.1、5.2、5.3.1又は5.3.2
1,1-ジクロロエチレン 0.02 0.02 JIS K0125の5.1、5.2又は5.3.2
1,1,1-トリクロロエタン 0.5 0.5 JIS K0125の5.1、5.2、5.3.1、5.4.1又は5.5
1,1,2-トリクロロエタン 0.006 0.006  〃
トリクロロエチレン 0.03 0.03  〃
テトラクロロエチレン 0.01 0.002  〃
1,3-ジクロロプロペン 0.002 0.002 JIS K0125の5.1、5.2又は5.3.1
チウラム 検出されないこと - 付表4
シマジン(CAT) 0.003 - 付表5-1又は5-2
チオベンカルブ 0.001 0.02 付表5-1又は5-2
ベンゼン 0.01 0.01 JIS K0125の5.1、5.2又は5.3.2
セレン 0.002 0.01 JIS K0102 の67.2又は67.3
硝酸態窒素 9 7 JIS K0102 の43.2.1、43.2.3又は43.2.5
亜硝酸態窒素 0.03 0.06 JIS K0102 の43.1
ふっ素 0.8 1.4 JIS K0102 の34.1又は付表6
ほう素 検出されないこと 4.5 JIS K0102 の47.1、47.3又は付表7
1.*  日本工業規格JIS K0102-1998 工場排水試験方法
2.** 「水質汚濁に係る環境基準について」昭和46年12月環境庁告示第29号の付表1〜付表7
3.***日本工業規格JIS K0125-1995 用水・排水中の揮発性有機化合物試験方法
4.   「検出されないこと」とは分析方法の欄に掲げる方法により測定した結果が当該方法の定量限界を下回ることをいう。
5. - 基準値が設定されていない。
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表2 生活環境の保全に関する環境基準に定められている有害物質の基準値とその分析方法
項 目 基準値 mg/L 分析方法
淡水域 海域
亜鉛 検出されないこと 検出されないこと JIS K0102の53
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表3 要監視項目として定められている有害物質の基準値とその分析方法
項 目 基準値 mg/L 分析方法
淡水域 海域
クロロホルム 0.05 0.06 JIS K0125*5.1、5.2又は5.3.1
1, 2-ジクロロプロパン 0.06 0.06  〃
p-ジクロロベンゼン 0.1 0.07  〃
イソキサチオン 検出されないこと 検出されないこと 付表**1-1又は1-2
ダイアノジン 検出されないこと 検出されないこと  〃
フェニトロチオン(MEP) 検出されないこと 検出されないこと  〃
イソプロチオラン 0.04 0.04  〃
オキシン銅 0.006 - 付表2
クロロタロニル(TPN) 0.001 0.002 付表1-1又は1-2
プロピザミド 0.008 -  〃
EPN 検出されないこと 検出されないこと  〃
ジクロルボス(DDVP) 検出されないこと 検出されないこと  〃
フェノブカルブ(BPMC) 検出されないこと 0.003  〃
イプロベンホス(IBP) 検出されないこと 0.008  〃
クロルニトロフェン(CNP) 0.0009 0.08  〃
トルエン 0.4 0.3 JIS K0125 5.1、5.2又は5.3.2
キシレン 0.4 -  〃
フタル酸ジエチルヘキシル 0.001 0.06 付表3-1又は3-2
ニッケル 0.004 0.007 JIS K0102***の59.3、付表4又は付表5
モリブデン 0.07 0.07 JIS K0102の68.2、付表4又は付表5
アンチモン 0.008 0.4 JIS K0102の62.2又は付表6
マンガン 0.2 0.2 JIS K0102の56.2、56.3、56.4、56.5
*  日本工業規格JIS K0125 用水・排水中の揮発性有機化合物試験方法
** 水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の測定方法及び要監視項目の測定方法について 平成5年4月28日 環水規第121号付表1〜付表8
*** 日本工業規格JIS K0102-1998 工場排水試験方法
-  基準値が設定されていない。
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表4 ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準とその分析方法
項 目 基準値 pgTEQ/L 分析方法
淡水域 海域
ダイオキシン類 1 1 JIS K0312
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表5 基準値、指針値が定められていない有害物質の基準値(mg/L)
項 目 基準値 mg/L
淡水域 海域
アンモニア態窒素 0.01 0.03
残留塩素(残留オキシダント) 検出されないこと 検出されないこと
硫化水素 検出されないこと 検出されないこと
0.0009 検出されないこと
アルミニウム 検出されないこと 0.1
0.09 0.2
陰イオン界面活性剤 検出されないこと 検出されないこと
非イオン界面活性剤 検出されないこと 検出されないこと
ベンゾ(a)ピレン 検出されないこと 0.00001
トリブチルスズ化合物 0.000007 0.000002
トリフェニルスズ化合物 検出されないこと
フェノール類 0.008 0.2
ホルムアルデヒド 0.5 0.04
注1:分析方法は公定法(JIS K0102)によることが望ましいが、基準値の備考欄に示した文献等の分析方法を採用しても差し支えない。
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社団法人 日本水産資源保護協会 環境情報センター
Japan Fisheries Resource Conservation Association
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